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インタビュー

誰もが自分らしく生き、働ける社会を創りたい。

リクルートグループの中で、人材派遣をメインの事業とするリクルートスタッフィングにて
社長を務める柏村美生さん。派遣スタッフ一人ひとりのライフスタイルに応じた
多様な働き方を派遣先の企業に提案し、
その一環として障がい者の就業支援にも力を入れています。
柏村さんが考える障がい者の働き方、そしてこれからの社会のあり方とは?

働きたい人の「らしい働き方」を、どう応援できるか。

-御社の事業について教えてください。

リクルートスタッフィングは、“「らしさ」の数だけ、働き方がある社会”を創ることをビジョンに掲げて人材派遣事業を行っています。現在、約2300人の従業員がおり、私たちのサービスを通して約5万人の派遣スタッフの方がお仕事をされています。今、日本の労働市場が変化している中で、働きたいけど、それぞれの事情によって働けない状況の方もたくさんいらっしゃいます。さまざまな方のニーズに応えていくためにも大事にしているのが、派遣スタッフの方との面談です。今の悩みや働く上で大切にしていること、どのような働き方をされたいのか、などを伺い、より深く知ることで、“WorkstyleCoMMPASS(ワークスタイルコンパス)”、つまり働き方の指針を提案しています。例えば、1年前はお子さんが小さくて短時間勤務を希望されていた方が、今は実家の近所に引っ越してサポートを受けられるため、フルタイムでの勤務を望んでいるなど、ライフスタイルの変化にともなうニーズの変化を把握して、それに合わせた対応ができるようにしています。定期的に面談を行うことで、スタッフの方それぞれのありたい姿、らしい働き方をどう応援できるかを考えていきたいと思っているんです。

障がい者支援のボランティア経験をきっかけに、
社会の仕組みを創る仕事に。

-今回、THINK UNIVERSALに協賛してくださったきっかけは?

障がいという個性を社会に広く知ってもらうというTHINK UNIVERSALの活動が、私たちと同じ思想で行われていたからです。私は大学時代に精神疾患の方の社会復帰をサポートするボランティアを行っていたのですが、その経験から多様な個性を持つ人がそれぞれ社会参加できる仕組みを世の中に創りたいと思ってリクルートに入社したので、想いの部分がシンクロした感じがしています。まずは知ってもらう、ということが第一歩でもあるので、THINK UNIVERSALのポスターはビジュアルインパクトがあってとても素敵だと思います。弊社でも掲出する予定です。

障がいを個性として理解することで、
適した働き方が見つかるはず。

-リクルートスタッフィングさんでも障がい者雇用を積極的に進めていますね。

私たちはアビリティスタッフィングという主に精神疾患の方を対象とした人材派遣・人材紹介のサービスも運営しており、一人ひとりの疾患の特徴や癖、対応のポイントを派遣先の担当の方にあらかじめ伝えることで、入社6カ月後の就業継続率94.7%を実現しています。日本では障がいのある方と接する機会が少ないこともあり、どう接していいのかわからない人も多いと思いますが、だからこそ私たちが介在したり、事例をつくることで状況を変えていきたいと思っています。障がいを理解し、個性として受け入れ、できる範囲で仕事に取り組める社会の仕組みをつくれたらなと。

また、障がいをお持ちの方の多様な働き方を実現する取り組みとして、リクルートスタッフィングクラフツという特例子会社を運営しています。ここでは重度障がいをお持ちの方、約350名が紙をすく仕事をされているのですが、一人ひとりが毎日リーダーに対して今日できたこと、できなかったことを報告する仕組みをとっています。そこで成長を喜んだり、時には悔し泣きをする方もいて、そんな様子を見ると「働く」ことはお金を稼ぐ以上の価値があると実感します。

株式会社リクルートスタッフィング代表取締役社長 柏村美生

誰もが働きやすい環境を創れば、
障がい者も働きやすくなる。

-御社では障がい者の方はどのように働かれていますか?

社内にも障がい者の方はいらっしゃって、データの入力・整理や書類作成など週に2時間とか月に3時間しか発生しないような仕事を集めて、スキルに合わせて切り分けて働ける取り組みの事例をつくっています。
また、ワーキングマザーやダブルワークなど、時間的制約のある方の働き方として「ZIP WORK(ジップワーク)」という限られた時間の中で専門的な知識やスキルを活かした仕事をする、という新しい働き方への取り組みも行っています。このZIP WORKは、現在100社以上の派遣先で導入していただき、成果をあげています。このように誰もが働きやすい環境をつくると、結果として、障がいのある方も働きやすくなる。それが目指すべき理想の状態だと思います。

新しい働き方の事例をたくさん創り、
社会に対して提案していきたい。

-多様な働き方があると、すべての人にとって働きやすいのですね。

これまで多くの企業では基本フルタイム勤務で、あれもこれもできるオールマイティな人物像が求められる傾向があったと思いますが、世の中、出張もできて転勤もできるような人ばかりではないですよね。この業務にはこの人が向いているという考え方がもっと広がり、役割を分担して、全体をみんなで補い合うような形で仕事をシェアできるといいですね。そうすると障がいのある方はもちろん、子育てや介護を抱えているような、さまざまなライフスタイルの方にもフィットできると思います。

多様な働き方の実現のために、弊社では“Workstyle Maker’s Episode(ワークスタイルメーカーズエピソード)”と名付けて、自分たちが個別に生み出した新しいワークスタイルや、取り組んでみて良かった働き方のエピソードを事例としてまとめています。例えば、お母様が病気になられたので仕事を辞めざるを得ないとおっしゃる方のために、派遣先の企業と交渉して、その状況でも働ける環境を創り出したとか。こうしたエピソードが約1500名分集まっているので、事例をもとに社会に対していろいろな働き方を提案できるようにしていきたいと思っています。

働くことで、人とつながり、
喜びや生きがいを感じることができる。

-「働く」とは、どういうことだと思いますか。

人間は人生を終えるまで、誰かとつながり、誰かに頼り頼られることに生きがいを感じるものだと思います。それは障がいのある方も同様です。働くことによって人とつながり、ありがとうと言われて喜びを感じたり、経済的、精神的に自立することで、自信になったりするんですよね。実際、身の回りのことをすべて親御さんにサポートしてもらっていた重度障がいの方が、リクルートスタッフィングクラフツで働き始めてからひとり暮らしを始めて、「帰宅後は仕事で疲れていても自炊をするんです」と楽しそうに話してくれたことがありました。それを聞いて、“すべての人に役割のある社会”がすこしずつ形になっていることを実感して、すごく嬉しい気持ちになりました。それぞれの人がそれぞれの価値観で働ける社会を創れるように、これからも会社としてさまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています。

Mio Kashiwamura, President and CEO of Recruit Staffing Co., Ltd.

柏村美生
株式会社リクルートスタッフィング代表取締役社長

1998年、明治学院大学社会福祉学科を卒業後、株式会社リクルート(現株式会社リクルートホールディングス)に入社。2004年に上海に赴任し、現場責任者として中国版ゼクシィ『皆喜』を創刊。帰国後はCAPカンパニーにてポンパレ室営業MD部長や美容情報統括部統括部長、リクルートホールディングス執行役員などを歴任。2016年4月より現職。